精神疾患からの回復～こころの居場所
目次
居場所のある安心感
双極性障害で苦しんでいたエンジニアのＢさん
最近とっても調子が良く
今日も相談室に来て笑顔で話し出しました
「最近、とっても安定しています
今日も朝からラジオ体操に参加してきました」
そんなＢさんが
最近ハマってるのはＶＲ
今話題のメタバースの世界です
☆☆
今までは
気分が落ち込んでいると仕事も思うように進まず
そんな自分を否定する日々…
気分が上がっていると
気分が高揚し 万能感が強くなり 大きな買い物をしたり
夜通しパソコンでネットサーフィンをしたり…
気分や体調の波も 周囲に理解されない中で
苦しみながら業務を続けていました
私生活は
仲良し家族はいるものの
仕事から帰宅したら
家事と育児におわれ バタバタと一日が終わる毎日…
「家族との時間も大事だけど
本当は1人でゆっくりしたいんです…」
本音をポロリと溢しました
世界を広げ「わたし」を生きる
Ｂさんが
世界を広げたいと思ったのは
気持ちが安定して来て
将来の事も含め考え出した今年の夏頃…
仕事人として ではなく
親として でもなく
1人の「わたし」として 自分をもっと大事にしたい
自分の時間と居場所を作りたいと
思われたことがきっかけでした
新しい習い事で仲間をつくる？
趣味のITを極めてみる？？
色々と考えた時期もありましたが
もともと内向タイプのＢさん
コロナ禍もあり 何も行動出来ずにいたのです
☆
そんなＢさんが
自分で見つけたメタバースの世界
最近は相談室に来る度に
イキイキと楽しさを私に話して下さり
それだけでも
体調と精神的な安定が手にとるように分かりました
聞くと…朝早起きをして
家族が起きるまでの時間にバーチャルの世界に出かけられるようで
5時半に起きて７時まで
時間を決めVRの世界に入り、それ以降は家族との時間…
子どもに朝ご飯を食べさせて
お着替えを手伝い 保育園へ送ってから仕事に向かわれます
バーチャルの世界では
まず6時からのラジオ体操をして
（これ、リアルに自分も体操するらしいです）
その後、知り合った友達とおしゃべりをし
一緒に町やイベントを見に行くらしいですよ！
「先日、TVの取材（リアルな全国放送）を受けました」…と
とっても嬉しそう！
念願の1人の時間…
広がる新しい友達…
軽い運動で健康に！
リアルでなくても世界を広げ
生活リズムを整え
その上運動もして健康に繋げているＢさんは
心身共に整い 最近、仕事も自信を持って行っているようです
安心の「居場所」（心理的安心感）
今回のＢさん
ご自身の得意分野で
無理せず自分の世界を広げられました
そして…
仕事人、親、自分自身を切り替え
時間の線引きも上手くマネジメントされています
何のしがらみもなく
友達と話ができること
そして、繋がりの中に
安心の“居場所”があると言うこと…
「それが一番楽しいです！」
そう笑顔でおっしゃいました
自分の居場所大事ですよね
心理的支援と「居場所」
「居場所」とは
単なる物理的空間だけでなく
その場所に対してどのような感情や意識、印象を持つかも含んだ
心理的な場所であると言えるでしょう
その、心理的居場所を考えた時
「個人的居場所」と「社会的居場所」という考え方があります
（中島・倉田(2004)）
「個人的居場所」
とは他者との関わりから離れて自分を取り戻せる場所
たとえば、自分の部屋や家庭などで
対して
「社会的居場所」
とは会社や学校など、他者との関わりを通じて
自分の存在を感じ、自分自身が受入れられ、求められる場所
その中で自分を確認できる場所のことです
つまり
自分のアイデンティティ認められ、人間関係が基盤となります
今回のBさんの場合
家庭の中の場所と時間に「個人的居場所」を作り
その中で、バーチャルの世界に「社会的居場所」が出来た
そのことで回復に繋がっているのではないかと感じています。
心理的支援をする上で
今回のBさんを見て
「心理的居場所感」に焦点を当て
心理的支援をすることが可能だと実感しました。
本人が望む心理的居場所を持つことが
日常での活力を向上させ
物事にチャレンジする意欲に繋がると
Bさんの変化を見て感じ 希望を持つことが出来た事例です
今回のことは大人のBさんについてですが
物理的に「居場所」があるように見えても
「心理的居場所」がないと気付いているか
または気付かないで
なんだか本当に「落ち着く場所」がない…「落着かない」…
と感じている人も居らっしゃるのではないでしょうか？
これが大人ではなく子どもなら
なおさら心の発達にも影響しますものね…
今回のことが皆さんのお役に立てると幸いです
（Bさんの許可を得て、エピソードを変えて投稿しています）